あかなまの"想い出づくり"

はてなブックマークで書いたコメントの余談と補足と自分語り。

あの日のコンビニ店員さんがくれた不思議な体験

20年ぶりの「ヒトカゲ、君に決めた」 - インターネットもぐもぐ

今でも時々読み返す。 / 大人になるって素晴らしい。 / 岩田聡にも読んでもらいたかった。

2018/06/01 10:02

 

 

一昨日の話。

私は仕事が終わると家と反対方向の電車に乗った。

 

 

私は仕事中によく炭酸水を飲む。

炭酸水がなくなると気晴らしにコンビニへ買いに行く。

そこにいつもいる店員さん。

20代前半くらいのおしゃれ女子。

ほとんど話したことはないけど、

道で会ったら会釈ぐらいはしていた。

 

ある日、いつものように炭酸水を買いに行くとその人がいない。

その人はもう店員さんを辞めたようだった。

そして代わりにお店が厚意で置いているという、

彼女が歌っているCDが置かれていた。

その時、店員さんがミュージシャンを目指していたのだと初めて知った。

せっかくなので買って聞いてみた。

確かに「いらっしゃいませ」と言う声で店員さんは歌っていた。

あの店員さんがミュージシャンを目指していたなんて、

ぜんぜん知らなかった。


…というのが今から10年前の話。

 

 

店員さんはその後、本当に歌手としてデビューした。

それを知ったとき、なんとなくtwitterをフォローしておいた。


そしたら一昨日の昼、たまたま、ほんとうにたまたま、

近くであの店員さんがインストアライブをやることを知った。

仕事が終わってすぐ向かえばギリギリ間に合う距離と時間。


どうしよう…。

もうずいぶん前の話だしなあ…。

インストアライブとか行ったことないしなあ…。

でもなあ…。

せっかくだしなあ…。

 

そういう訳で、私は家とは反対方向の電車に乗った。

 

会場に着くと「店員さんのいつものファン」みたいな人がたくさん集まっていた。

申し訳ないので前方はファンの方々に譲り、後方で拝見することにする。

謎の緊張感。

するとミュージシャンとなった店員さんがステージに登場した。

なんか(うわあ!)ってなった。

(久しぶりに見たけどぜんぜん変わってないなー。)と思った。

店員さんの登場に湧くファン。

そうだ店員さんはファンを湧かせる存在なんだ。

(当たり前だけどすごい!!)

 

そして演奏が始まる。

ファンうっとり。

なんだかそういう光景を見られるのがすごく幸せだった。

からしっかりと見て聴いた。

私は店員さんのことを何も知らなかったのだ。

 

ライブが終わってCDを買った。

コンビニで買ったときから2枚目。

イベント参加券をもらって、サインしてもらうために並んだ。

 

(覚えてないだろうなあ)と思っていたら、

会うなり「?…ご無沙汰してます…、ですよね?」と言われた。

(おお、マジか)と思ってうれしくなった。

「でもどこで会ったか思い出せないんですよね」と。

実は…と話すと店員さんよりもマネージャーさんが驚いていた。

CDにサインをもらい「宛名は?」と聞かれて名前を言った。

初めて名乗って、初めて握手した。

「ぜひまた来てください」

 

 

店員さんが本当に私を覚えていたのか、

いつも知らない人にはそう言っているのかはわからない。

でも自分は10年前の伏線を今回収しているみたいな気分だった。

人生でこういう瞬間に立ち会えるのは、それほど多くない。

 

 

過去は未来に繋がっていく。

コンビニで毎日炭酸水を買っていた何気ない日々が、

こんな素敵な瞬間につながっていたなら、

今日のこの1日だって、きっとなにか美しい出来事につながっているに違いない。

そういう風に思えた。

あの日の店員さんがくれた、ちょっと不思議な体験だった。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

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